新しい携帯電話の通信方式「LTE」はなぜ速い?

 携帯電話の新しい通信規格の「LTE」。2010年から国内では一部通信事業者がサービスを開始していましたが、昨年秋の「iPhone 5」がLTEに対応していたことで、国内の通信事業者各社のLTEサービスが出そろいました。エリアも急速に広がっています。今月のテクの雑学では、LTEとはどんなものなのか、なぜ高速なのかを解説します。


後から「4G」と認められた規格
LTE(Long Term Evolutionの略)は、広く普及している第3世代携帯電話(3G)の次の通信規格として登場しました。LTEが登場した当初は、電気通信の標準策定を行う国連の組織であるITU(国際電気通信連合)が「第4世代(4G)」として定義していた仕様よりも若干スピードが遅かったため、「3.9G」などと呼ばれていました。しかし、先行してサービスを開始したヨーロッパやアメリカの通信事業者が、端数を切り上げて自社のサービスを「4G」と称していたため、ITUも後追いでLTEを「4G」に含めることを認めました。

高速・大容量・低遅延
LTEの特徴は「高速」「大容量」「低遅延」の3つです。高速とは文字通り通信速度が速いこと。3Gではデータ通信速度が最大でも下り2Mbps程度、3Gを少しパワーアップした3.5Gでは7〜20Mbps程度だったのが、LTEでは現在、37.5Mbps〜112.5Mbpsまで実現できています。また、「大容量」とは、同じ周波数帯域でもより多くの端末が通信できること、「低遅延」は、接続の確立や、通信時のデータの遅れが少ないことを示しています。言い換えると、「速いネットワークに、たくさんの端末が、さくさくつながる」ネットワークなのです。

通信速度が速いので、たとえば、外出先でデータ量の大きい高画質な動画を楽しめます。また低遅延なので、シビアなタイミングが要求されるゲームもLTEならストレスなく楽しめます。高速・低遅延のLTEなら、パソコンをモバイル経由でクラウドサービスに接続してスムーズに利用できます。

「速い、たくさん、さくさく」を実現する5つの特徴
なぜ、LTEは速くて、たくさん、さくさくつながるのでしょうか。LTEの特徴を技術的な面から見ると、5つの特徴が挙げられます。

1)広く使える周波数帯域幅
  「周波数帯域幅」とは、通信するのに使える電波の周波数の「幅」を指します。理論上は、周波数帯域幅が広いほど、たくさんの信号を一度に送れるので、データをたくさん送れる、すなわち高速に通信できます。イメージとしては、細い水道管と太い水道管では、太い水道管の方が一定時間に大量の水を流すことができるという感じです。

3G(W-CDMA)では、使用できる帯域幅は5MHzですが、LTEでは1.4MHz、3MHz、5MHz、10MHz、15MHz、20MHzの中から自由に選択できます。日本でサービスされているLTEは、場所によって37.5Mbps、75Mbps、100Mbps(※対応端末では112.5Mbpsの通信が可能)のいずれかの速度になりますが、それぞれの周波数帯域幅は5MHz、10MHz、15MHzとなっています。

2)きめ細かい変調方式の導入
  アナログとデジタルの信号を変換する「変調」の方式にも工夫がされています。変調の基本は、何も信号が乗っていない状態の電波(搬送波)の振幅や位相を変化させることです。デジタル信号では、それぞれの情報の単位(ビット)が1と0のどちらかの値をとりますが、1回の変調(シンボル)で複数のビットの状態を伝達できれば、伝送効率が上がることになります。

 QPSKという変調方式は、信号の位相を変えることで、「0,0」「1,0」「0,1」「1,1」という4つの状態、すなわち2ビットの情報を表現できます。位相に加えて振幅を変えることで、1つのシンボルで16の状態、すなわち4ビットの情報を表現できるのが、16QAMという変調方式です。LTEでは、さらに細かく位相と振幅を変えることで、1つのシンボルで64の状態(6ビットの情報)を表現できる「64QAM」という変調方式を使っています。こうすることで、同じ周波数帯域幅でも、より多くの情報を送れるのです。

もっとも、64QAMは、16QAMやQPSKに比べると、細かく分割されている分、ノイズなどに弱いという短所があります。LTEでは、信号の強度によって、変調方式を変え、通信状態が良いときは64QAMを使用して高速に伝送し、良くないときは16QAMやQPSKを使用して確実に伝送する仕組みになっています。一度に送れるデータの量を減らしても、エラーの訂正のために再送信を繰り返す必要が減るので、トータルの通信速度はその方が速くなるのです。

3)複数のアンテナを束ねるMIMO技術
  MIMOは、基地局と端末のそれぞれに複数のアンテナを設けて、各アンテナが同時に送受信を行うことで、通信速度を上げる技術です。現在は、基地局と端末それぞれに2本ずつアンテナを使う2×2MIMOが主流で、MIMOを使用しない場合に比べると2倍の通信速度を実現できます。LTEの仕様上はそれぞれに4本ずつアンテナを使う「4×4MIMO」までアンテナを使用することができます。

4)電波を効率よく共有するOFDMA
  OFDMAは、日本語で「直交周波数分割多元接続」と呼ばれます。1つの周波数を複数の端末が共用する方法としては、「時間で細かく区切る」TDMA方式、「周波数を細かく区切る」FDMA方式、「どの端末かを区別するコードを使う」CDMA方式がありました。OFDMAは、「周波数と時間で細かく区切ったチャネル」(サブキャリア)を、通信している端末に効率よく割り当てていきます。

使用する周波数帯域全体を一括して管理する従来の方式に比べて、より状態の良いサブキャリアを選択して利用することで、より多くの端末が、全体として効率よく通信できるのです。

5)シンプルな無線ネットワーク
  無線ネットワーク自体の仕組みも変わりました。音声通話は「回線交換」、データ通信は「パケット交換」という別々の仕組みで処理していた3Gに比べ、LTEではすべてパケット交換網で処理する仕組みを前提としています。そのため、ネットワークの構成もシンプルになり、低遅延が実現できます。ただし、現在販売されている端末では、音声通話は3Gを利用しているので、「CSフォールバック」という仕組みで音声通話の時にはLTEではなく3Gに「つなぎなおす」仕組みとなっています。

FD-LTEとTD-LTEはどこが違う?
ところで、LTEには「FD-LTE」と「TD-LTE」の2種類があります。これは、上り(端末→基地局)と下り(基地局→端末)の電波をどのように分割しているかの違いをあらわしています。FD-LTEは、上りと下りの電波を「周波数」で分割しています。それに対し、TD-LTEでは、電波を短い時間で区切って上り用信号と下り用信号を交互に送受信する方式です。

 日本で「LTE」として各社がサービスしているのは、FD-LTEです。TD-LTEについてはソフトバンクモバイルが「Softbank 4G」の名称で提供しているAXGPという通信方式が、TD-LTEと完全互換の方式となっています。

 世界的にみると、商用サービスはFD-LTEが先行しており、ヨーロッパ、アメリカ、韓国などで現在提供されているサービスはFD-LTEが中心です。一方のTD-LTEは、サウジアラビアで2011年から商用サービスを開始したのを皮切りに、オーストラリア、ブラジル、ポーランド、インドなどで商用サービスが開始されています。中国でも、2013年中のTD-LTEの商用化を目指して現在整備が進められており、世界中に広がりつつあります。

 また、日本やアメリカでも、「WiMAX」という規格で高速通信サービスを提供していた事業者が、次世代の規格としてTD-LTEもしくはTD-LTEと互換性のある規格を採用する動きがあります。世界的に見ても、今後しばらくは、FD-LTEとTD-LTEの両方の方式が併用される時代が続きそうです。

 日本だけでなく世界中で、スマートフォンの急速な普及により、モバイルネットワークに接続される端末が増え、データ通信の量も増えています。しかし、通信に利用できる電波は有限なので、より効率よく電波を利用する必要があります。通信事業者各社がLTEの展開を急ぐのには、より電波の利用効率の良いLTEにトラフィックを移すことで、全体として電波の利用効率を上げたいという事情があるのです。

高速・大容量・低遅延といわれる新しい通信規格LTEに対応するため、TDKでは素材レベルから独自の技術を駆使して、さまざまな部品やモジュールを提供しています。

今後、ますますデータ通信量が増加する社会において、携帯電話やスマートフォンなど向けキーパーツとして、必要な信号だけを選別したり、周波数制御やノイズ対策に貢献します。

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